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富士桜法律事務所

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株式

はじめに

各種金融商品取引の中で,株式が最も身近に感じられると思います。しかし,身近と思われる株式取引ですが,大きな損失を被っている事案はあり,大幅な被害回復が行われている事案もあります。そのような事案の最近の特徴を大まかに分類すると,

  • (1)外国株式取引を行っている事案
  • (2)信用取引を行っている事案
  • (3)長期間にわたって売買を繰り返している事案

となります。共通するのは「過当取引(回転売買)」です。

外国株式取引を行っている事案

外国株式取引で多いのは,アメリカや香港の株式です。投資信託で回転売買が行われていることについては,新聞等にも取り上げられ,問題視されるに至っていますが,実は,外国株式取引も「回転売買の温床」になっているのです。

外国株式取引には,「委託取引」と「相対取引(仕切り取引)」があります。「委託取引」とは証券会社が顧客から注文を受け,注文を海外の市場に取り次いで行う取引方法であり,国内の株式取引とだいたい同じ方法です。一方,「相対取引(仕切り取引)」とは,証券会社が保有する外国株式を,証券会社が決めた価格(「仕切り価格」といいます)で,証券会社を相手に売買する方法です。「委託取引」の場合,手数料はだいたい1%未満です。これは,国内株式取引の手数料とだいたい同じ水準です。しかし,「相対取引(仕切り取引)」の場合,証券会社の手数料は2~3%で,証券会社にとって利益が非常に大きいのです。しかも,この証券会社の手数料は,価格(仕切り価格)の中に含められてしまっているため,顧客は,証券会社が幾らの手数料を取っているのか見えません。これを証券会社側から見ると,外国株式取引を「相対取引(仕切り取引)」で行えば,顧客には分からないように,他の取引で得られるよりも大きな手数料を得られる,ということになります。

このような理由から,「相対取引(仕切り取引)」の方法による外国株式取引は,「回転売買の温床」となっているのです(実際に,メガバンク系列の証券会社が,国内株式取引すらやったことのない主婦に,外国株式取引を行わせた事案がありました。)。

もちろん,外国株式取引には,このような問題性以外にも,外国の株式市場の情報が得づらいとか,為替変動リスクを負うという問題もあります(株価が下がっていなくても,為替が下がれば損失が発生します。)。

信用取引を行っている事案

信用取引は,証拠金を預託することで,証拠金の数倍の取引を行える株式取引手法です。利益も数倍になりますが,損失も数倍になります。通常の株式取引(「現物取引」といいます)であれば,どんなに損をしても,出したお金がゼロになるまでですが,信用取引は,ゼロになるだけでなく,更に損失を被ることもあります(「追い証」とか「不足金」と呼ばれます。)。信用取引をして破産をする,というケースもあるようです。信用取引は,このような,元手の数倍の取引を行えることのリスクや仕組みを十分に理解した上で行わなければなりません。もちろん,このような基本的な仕組み以外にも,維持率,代用有価証券制度,空売り,二階建て取引など,いろいろ理解しなければならない事項はあります。

信用取引には,常に,「過当取引(回転売買)」の危険性がつきまといます。信用取引は現物取引に比べて手数料率が高いので,証券会社からすれば,次々に取引をしてもらった方が利益を得られるということになります。当然,どんどん取引を行うよう勧誘が行われます。また,信用取引は決済期限があるため,ずっと持ち続けることができません。比較的短期間で売買することになるため,証券会社としても,過当取引であることをカムフラージュしやすく,回転売買をさせやすいということもあります(実際にも,裁判になると,証券会社は「信用取引は,制度的に短期売買が予定されている取引類型なのだから,この程度の取引は普通である」と主張してきます。)。

このように,信用取引は,手数料が高く,回転売買をさせやすく,顧客も応じてきやすい取引なので,回転売買が行われていることが少なくありません。

長期間にわたって売買を繰り返している事案

外国株式取引や国内株式の信用取引にかかわらず,長期間にわたって頻繁に売買を繰り返し,全体を通して損失が積み重なっているという事案もあります。多くの場合,株式取引のみでなく,手数料の高い投資信託や債券の売買も途中にはさみながら進みます。もし,このような取引を,証券会社の担当者主導で行っている場合には,やはり,回転売買の疑いがあります。

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