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富士桜法律事務所

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CDOエクイティ、AT1債

CDOエクイティとは何か

CDOエクイティは,国内で,ごく一部の外資系証券会社のみが個人顧客に販売した商品です(私の知る限りでは,一社しかありません。)。CDO(Collateralized Debt Obligation:債務担保証券)とは,証券化商品の一つです。

CDOは,証券化商品に投資することを目的として設立されたSPVが発行する有価証券のことです。「証券化」とは,資産保有会社がその有する資産をまとめてSPV(特別目的会社)に譲渡し,SPVが当該資産のみを担保資産として有価証券を発行する仕組みを言います。

CDOのスキームは,企業の貸借対照表(バランスシート)になぞらえて,企業の「資産の部」には工場・商品在庫などが入るがCDOの「資産の部」には社債やローン債権が入る,企業の「負債の部」には銀行借入や社債などが入るがCDOの「負債の部」にはシニアやメザニンと呼ばれる債券が入る,企業の「資本の部」には株式が入るがCDOの「資本の部」にはエクイティが入る,などと表現できます。

CDOは,優先劣後構造が採用されており,優先順位の高い方からシニア,メザニン,エクイティと呼ばれ,裏付担保資産が済み出すキャッシュフローはシニア,メザニン,エクイティの順に支払われ,他方,裏付担保資産にデフォルトが生ずると,エクイティへの支払いがなくなり,次にメザニン,最後にシニアへの支払いがなくなるという構造になっています。

以上は,証券会社が顧客に交付した分厚いピッチブック(説明資料)を読み解いた上での説明ですが,以上の商品構造を,一体どれだけの人が理解できるのでしょうか。

重大な問題がある商品

CDOエクイティを購入された場合,おそらく,平成20年ころを境に配当が止まり,証券会社が発行する報告書上の評価額は0円になっていると思います。もしCDOを購入されている場合,内容にかかわらず,ご相談ください。

証券化商品は,金融庁も日本証券業協会も「基本的にはプロ同士の取引」と評しており,個人顧客には適さないことを明言しています。また,某メガバンクのレポートにも「エクイティのリスクは通常は非常に大きい」と書かれ,某外資系証券会社の書籍にもエクイティは「ハイリスク・ハイリターン」であると書かれ,某政府系機関のレポートにも「複雑な商品性を有する」と書かれています。

現に,日本でCDOへの投資を行っていたのは大手機関投資家(大手銀行,損害保険会社,生命保険会社など)であり,CDOの中でもエクイティに投資を行っていたのは,高リスク選好のヘッジファンドであったことが,私の各種調査研究結果で客観的に明らかになっています。

以上の内容に照らせば,個人顧客にCDOエクイティを販売することには,非常に大きな問題があると考えます。CDOエクイティを購入したことがあるのであれば,ご相談ください。

クレディ・スイスAT1債の問題(2023年4月更新)

⑴ クレディ・スイス経営危機、UBSによる買収、無価値化したAT1債

2023年に入り、クレディ・スイスの経営危機が相次いで報道されるようになり、私は推移を見守っていました。私が取り組んでいる幾つかの事案で、クレディ・スイスが発行した仕組債があったため、その仕組債は大丈夫なのか、という視点で、状況を見ていました。

最終的には、スイス政府と金融当局が仲介し、同年3月19日(現地時間)、長年のライバル関係にあったUBSが買収するという形で、クレディ・スイスの破綻は回避されましたので、私は、胸をなで下ろしました。

しかし、時同じくして、この買収の際に、クレディ・スイスの160億スイスフラン(約2.2兆円)の同社のAT1債が無価値化した、との報道がありました。

⑵ やはり国内で個人に売られていた

「AT1債」(Additional Tier1債)とは、債券と株式の中間的な特性を持つ金融商品で、償還期限のない永久債として発行され、発行元の金融機関の経営が悪化した際に投資家が損失を引き受けることで金融機関の債務を減らすという特殊な債券です(「永久劣後債」とも呼ばれます。)。あまり馴染みのない金融商品です。

クレディ・スイスのAT1債の無価値化が報じられた直後の2023年3月末、私は、某新聞社の記者の方から、AT1債に関する取材を受け、その際に、日本国内の販売状況について話が及びました。その時点では、投資信託に少量だけ組み入れられていたとのリリースと、「影響は限定的」という財務大臣のコメントが出ていたくらいで、まだ日本国内での具体的な販売状況は明らかになっていませんでした。

私は、記者の方の質問に対し、「個人へ広く販売されていたということはないだろうけど、一部の富裕層向けに販売している可能性はある。こういう馴染みのない商品を富裕層向けに売っているとすれば、■■証券とかじゃないですかね。」と、予想をコメントしました(念のため、具体的な社名は伏せておきます。)。

2023年4月14日になり、某大手証券がAT1債を国内で富裕層向けに約950億円分も販売していた、との報道が、ブルームバーグ日本経済新聞NHKなど出ました。残念ながら、私の予想は的中してしまいました(売っていた証券会社も的中しました。)。「まだそんなことをしているのか」「またそんなことをしているのか」というのが率直な感想です。

⑶ 被害回復に取り組みます

この場に全てを書くことはできませんが、AT1債を個人に販売することについては幾つかの問題点があると考えています。これまで先例のない金融商品の被害回復の裁判等に取り組み、それなりの成果をあげてきましたが、今回も、被害回復に取り組みます。

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